
こんにちは、かりんです🥰
2025年01月24日(金)に行われた日銀金融政策決定会合(その後の植田総裁の会見)についてまとめます。
2025年01月24日(金) 日銀政策決定会合 要点
・無担保コールレート(オーバーナイト物)を、0.5%程度で推移するよう促す。
やっぱりきましたね。追加利上げ。
今回は事前にかなり報じられていましたので市場もだいぶ織り込んでいたように思います。
経済・物価情勢の展望(2025年1月)【基本的見解】<概要>
・先行きのわが国経済を展望すると、海外経済が緩やかな成長を続けるもとで、緩和的な
金融環境などを背景に、所得から支出への前向きの循環メカニズムが徐々に強まること
から、潜在成長率を上回る成長を続けると考えられる。
・物価の先行きを展望すると、消費者物価(除く生鮮食品)の前年比は、2024 年度に2%
台後半、2025 年度に2%台半ばとなったあと、2026 年度は概ね2%程度となると予想
される。既往の輸入物価上昇を起点とする価格転嫁の影響が減衰する一方、消費者物価の
基調的な上昇率は、人手不足感が高まるもと、マクロ的な需給ギャップの改善に加え、賃
金と物価の好循環が引き続き強まり中長期的な予想物価上昇率が上昇していくことから、
徐々に高まっていくと予想され、見通し期間後半には「物価安定の目標」と概ね整合的な
水準で推移すると考えられる。なお、2025 年度にかけては、消費者物価(除く生鮮食品)
の前年比に対して、米価格が高水準で推移すると見込まれることや政府による施策の反動
が生じることが押し上げ方向で作用すると考えられる。
・前回の見通しと比べると、成長率については概ね不変である。消費者物価(除く生鮮食
品)の前年比については、2024 年度と2025 年度が、米価格の上昇に加え、このところ
の為替円安等に伴う輸入物価の上振れもあって、上振れている。
・ リスク要因をみると、海外の経済・物価動向、資源価格の動向、企業の賃金・価格設定
行動など、わが国経済・物価を巡る不確実性は引き続き高い。そのもとで、金融・為替
市場の動向やそのわが国経済・物価への影響を、十分注視する必要がある。とくに、こ
のところ、企業の賃金・価格設定行動が積極化するもとで、過去と比べると、為替の変
動が物価に影響を及ぼしやすくなっている面がある。
・リスクバランスをみると、経済の見通しについては概ね上下にバランスしている。物価
の見通しについては、2024 年度と2025 年度は上振れリスクの方が大きい。
2025年01月24日(金) 植田総裁による会見 質疑応答
続いて植田総裁の質疑応答についてざっくりと。聞き逃したのもあります。まぁ参考程度に。
追加利上げを決めた理由について。12月の会見で利上げの判断材料として、春闘でのモメンタム、米国のトランプ新政権の経済政策の不確実性、円安の物価への影響を挙げていたが、それぞれの見方がこの1ヶ月でどう変わったのか変わっていないのか、それが政策の判断にどう影響したのか教えて。
我が国の経済、物価はおおむね見通しに沿って推移しており、 先行き見通しが実現していく確度が高まってきていると判断した。
今年の春闘は昨年に続き、しっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した。
また各種のアンケート調査でも、昨年の同時期対比で賃上げの実施を計画する先が増加していることを確認した。
米国についてはまずインフレ率が低下するもとで様々なデータから経済がしっかりとして評価した。また、トランプ大統領が就任し政策の大きな方向性が示されつつあるが、その後も国際金融市場は落ち着いていると判断した。
輸入物価は前年比で見れば引き続き抑制された水準にあるいう点は変わりはないとみている。ただ、前回10月の展望レポート時点との対比で見ると、輸入物価が上振れている。こうした状況を踏まえ、 2%目標の持続的、安定的な実現という観点から追加利上げが適切と判断した。
0.5%の利上げによる実体経済への影響をどうお考えか。0.75%以上となる今後の利上げについてはこれまでと同様の考え方、ペースで進めていくのか?それともこれまで以上に慎重に見極めていくのか?
今回の利上げは昨年7月の利上げと同様に金融・経済に影響するが、今回の金利変更後も実質金利は大幅なマイナスが続くので緩和的な金融環境は維持されると考えている。
今後も経済物価の見通しが実現すればそれに応じて引き続き政策金利を引き上げ、 金融緩和度合いを調整していくという基本的な考え方に変わりはない。
金融政策を調整するタイミングは、今後の経済・物価の状況次第。
展望レポートで物価見通しが2025年度が0.5%の大幅な上方修正となっているが、日銀の利上げがビハインドカーブに陥るリスクっていうのは出てきているのかどうか?
物価見通しは今年の半ばくらいまでは上昇するとみているが、その後は落ち着いてくるとみている。理由は物価上昇の原因がコストプッシュ的なものだから。
一方で、基調的な物価上昇率については見通しに沿って緩やかに上昇し続けているいう範囲にとどまっている、とみている。
就任直後のトランプ関税の発動は回避されたが、もし今後発動された場合、米国のインフレが再燃し為替相場は円安、ドル高が加速すると思われる。こうした状況では輸入物価の上昇を通じて、日本の国内物価の上振れリスクを招くこともあるが、その場合、日銀は早めの利上げで対応することになるのか?
アメリカが関税を引き上げれば報復関税含めいろんな影響があると考えられるが、現状ではアメリカの関税の規模・広がりについても不確実性が高い、決まっていない段階とみている。具体的にこうなりそうだということを申し上げられる段階ではない。
段階的な利上げを進める理由について。経済を冷やす側面もある利上げを行う理由は?
一般的な理由としてはインフレ率が上がっていく中で金融緩和度合いが強い状況を長い間続けると、後々に急激な利上げを行うことを迫られる可能性がある。経済・物価の情勢に合わせて適宜、利上げを行うことが必要と考える。
昨年3月以降1年足らずで3回の利上げを行ったが、政策金利が0.5%に引き上げたことが経済社会に与える影響は?
今回の利上げの影響がどういう風にでてくるか詳しくみていきたい。
金利だけでなくインフレ率や賃金も上がっているので、その面もみながら今後の進め方を決めていきたい。
市場との対話で「不確実性」と「リスク」という言葉は明確に切り分けて使ってるのか?
将来について「まったくわからないこと」と「ある程度読めるが不確実なこと」をあらわす言葉はいちおう分けているが、ごちゃごちゃになることはある。
今後の利上げは1回か2回の利上げで済むものなのか?40年前くらいの金利が水準になるのか?
例えば企業の賃金設定のところで、ノルムというようなガイドを使ったりするが今年の春闘に関係してヒアリング結果等をみると、単純に今年どれくらいにするかという視点だけではなく、中期的に賃金が上がるということを企業の中期計画の中に取り込みつつ、今年の賃金をどれくらいにするかということを決めていかないといけないという言及が少し増えてきていると感じている。
これこそある種のノルムの変化であり、それがそこそこの幅で、例えば前と比べると2%上にずれるとか、そういう幅で起こると基調的な物価上昇率が大きく上昇する、あるいは我々の目標に近づいていく、 収束していく可能性が非常に高まる。
それはもちろん中立金利に持っていくということを可能にする、あるいはそこへのスピードを早めるという要因となるが、中立金利がどれくらいにあるかという点も社会構造の変化が影響する。そこについては今のところ新しい分析なり情報がある段階では残念ながらない。
ここしばらく日銀は「実質金利は極めて低い」と言ってるが、ではまだ相応の利上げの幅があるのか?マーケットの今の見方では、今年1回、2回ぐらいの利上げで、来年1回ぐらいで政策金利はだいたい1%くらいまであがるとみられているけどどうか?
中立金利に関する日銀の見方はここまで変更はない。
中立金利は以前より「かなりの幅がある」と申し上げているが、その幅についても大体同じようなものとみている。その幅全体をみると中立金利に対して現在の政策金利が0.5%になったとしても、まだ相応の距離があるとみている。
今回政策金利を0.5%に上げたことで少なくとも中立金利に近づいてきてると思うが、その分これまでよりも注意深く影響を見なければいけない状況になってきているのか?
0.25%の時と比べれば0.25%分は中立金利に近づいたということはおっしゃる通り。
いずれにせよ金利が引き上げられた影響は常に注意深く見ていく。
「第一の力」「第二の力」という言葉を使わなくなったと感じるが?
輸入コストによって物価が上がる第一の力が減衰していって、第二の力にバトンタッチするという日銀の想定したような物価の動きではなくなったので使わなくなったのか?
考え方そのものは全然変っていない。
政策委員会の議論で第一の力、第二の力という表現を使われる方がたまたま少し最近減ってただけ。
しばらく前まではインフレは第一の力の影響力が強く、これは減衰しつつあり第二の力にだんだん移りつつある見方が生きていて、そのプロセスが続いてる。
ただ、その上で申し上げれば今日発表しました見通しで「除く生鮮」の24年度、25年度の見通しが大きく上方修正になっているところは、 この分類で言うと第二の力によってるのではなくある種の第一の力、米価格の上昇は輸入価格ではないがコストプッシュという意味では第一の力的なもの。この影響が強く働いてこういう上方修正になっている。
物価上昇の要因がコストプッシュだとすれば、それでも利上げをした理由は?
基調的な物価上昇率も2%に収束していく可能性が高まったと判断した。
これまでにトランプ大統領が打ち出した政策などで、不確実性という意味で総裁が注目しているポイントは?
他国の政策にあまり具体的にコメントするのは適切でないが、関税政策が具体的にどんなかたちになるのかは最大の注目点のひとつ。
トランプ政権の「関税の規模や広がりについて非常に不確実性が高い」と言ってたのに利上げしたのは、トランプ大統領の就任直後の初動だけに注目してたの?海外の与える影響は利上げの障害になるほどではないと判断したのか?
トランプ新政権のスタートはおおむね想定通りで大きな混乱はない。
それでいて経済物価が見通し通りなので、この状況で動かない、ということにはならないという判断。
この先、米国政策の不確実性は残るが、具体的な姿が決まった時に適宜見通しに織り込んで対応が必要なら対応するという進め方にならざるを得ない。
1月会合の利上げについて今回かなり予告型に近い発信だったが今後もこのスタイルでいくのか?
昨年の後半からボードメンバーの講演等について 時期を平準化するとかスケジュールを早めにアナウンスすることを心がけるようにしている。その上で各講演で物価、経済見通し、政策の基本的な考え方を丁寧に説明することに努めている。
そこまでのデータをきちんと見て金融政策を変更することが適当かどうかを議論するという基本性を改めてリマインドさせていただいた。
質的緩和の手じまいについて、ETFの処分は近づいてきているのか?時間がかかっている理由はなにかあるのか。
もう少し時間を頂きたい。
なかなか難しい問題である。
政策金利0.5%は中立金利まで相応の距離があるといってたが、一部では日本の人口減少を考えると、推計で中立金利は1%に届かないという見方もあるが?
中立金利まで距離があると申し上げた理由は、日銀の分析の例として名目で1~2.5%の間に分布しているということから、0.5という数字はまだ距離がある。人口減少が続くとか他の構造的要素が変化している点など、どう中立金利に影響するかはこの先分析努力はするがなかなかリアルタイムでわかるものではない。
金利の引き上げ幅を0.25ではなく、0.1にするとかそういうことはあるのか?
金利の引き上げペースは今後上がってくる情報をみて適切に判断したい。
実質賃金が伸び悩んで個人消費が下振れするリスクについてどう考えている?
常に意識している。
消費者物価見通しの上方修正はコストプッシュ型の要因なので今年の後半には落ち着いてくる。
2006年ごろに金利0.5になったことがあるが、その時と今とどう違うのか?
2006年の時のインフレ率はおおまかにゼロになったくらいだった。
今回は物価上昇率2%を超える期間が3年前後続いている、と言う点は大きな違いと考えている。
だからといってポンポン上げていけるかは安易に考えずに注意深くみていく。
基調的な物価上昇率は徐々に高まっているといってるが、実際どのくらいなの?
定量的な基調的物価上昇率の指標を見せれば一番いいが、まだそこには到達していない。
賃金上昇率や期待インフレ率、賃金がどれくらい物価に転嫁されるか、その背景にある経済の動きなどを総合してみていく。
トランプ大統領が暗号資産の規制緩和をすると既存の通貨が使われづらくなったりすることになると思うが、そのことが金融金利政策を運営していく上でどんな障害あるいは弊害があるのか?日銀を含めて各国が進めているデジタル通貨についての育成、運営にどんな影響があるのか?
まず、 アメリカでの動きが他の通貨にどういう影響があるかという点については、やはり信用の程度が低い通貨であって、そのまた先を考えると、結局は通貨価値を安定的に保つような金融政策をきちんとできてるかどうか いうところだと思われる。そこができていない国の通貨は、使いやすい例えばアメリカドルのステーブルコインに人々の利用が流れてしまうというリスクを抱えていると思います。
そういう観点から、私どもも繰り返し申し上げていることですが、 物価安定の目標をちゃんと達成するということが必要と考えている。
今回の展望レポートで日銀の潜在成長率の推計値を従来の0%台後半から0%の間に下げているがその理由は?
潜在成長率を下げた理由は人手不足。
ホテルのように、人手不足で余ってる設備をフルに使えない、という事例もあるので潜在成長率を少し下方修正した。修正の幅は小さいので、中立金利に影響あるかもしれないが、ごくわずかな修正になると思われる。
次の利上げで0.75%に引き上げれば30年ぶりの水準だが、日銀は0.75%を壁とみているか?
ある水準を壁として認識しているということはない。
利上げを続けて中立金利を超えてしまった場合は、なにかしらの反応が経済社会から出る。
物凄い大きなマイナスの影響が出るまで待つということではなく、出始めの段階で手がかりを掴みたい。
手探りの前進を続けたい。
次回の利上げに臨む際に、今のように緩やかな経済成長を続けていれば利上げをするのか?それとも現状の成長よりももう一段加速してからの利上げなのか?
成長率の動向というよりも物価の見通しが実現していくかどうか。
基調的なインフレ率が2%に収束していくかどうかを主なポイントとしてみていることはこれまでと変わりはない。
FRBがNGFS(気候変動リスク等に係る金融当局ネットワーク)から脱退したが、日銀もメンバーだが日銀の気候変動問題への対応方針はこれまでと変わりないか?
FRBについてはノーコメントだが日銀は気候変動問題は大事な問題と考えている。
さまざまな国際的なフォーラムにも参加する。気候変動対応オペをするということで、中長期のインフレ率を安定的に保つ目標を実現すべき中央銀行というマンデートの中に収まる話だと解釈している。
まとめ
まとめると、こんな感じですかね🤔
・今年の春闘は昨年に続き、しっかりとした賃上げの実施が見込まれると判断した
・トランプ新政権のスタートはおおむね想定通りで大きな混乱はないと判断した
・輸入物価は前年比で見れば引き続き抑制された水準にあるという点は変わりはないとみている
・政策金利0.5%は中立金利まで相応の距離がある
・中立金利に関する日銀の見方はここまで変更はない
・アメリカの関税政策が具体的にどんなかたちになるのかは最大の注目点のひとつ。
・日銀は利上げについてある水準を壁として認識しているということはない
まぁちょっとタカ派な印象ですかね。先物は上がってるけど。
今回は取り急ぎ以上です!
感謝ですm(__)m